流体力学

流体|空気抵抗が生じるメカニズム|初歩から解説

流体力学

 自転車、自動車などの乗り物に生じる空気抵抗。初めての方でも理解できるよう、流体力学をかみ砕いてそのメカニズムを解説します。

1. 空気抵抗の種類

 空気抵抗の種類は大きく分けて2つあります。「粘性抵抗」「圧力抵抗」です。

(1)粘性抵抗

 読んで字のごとく、空気や水のような流体は粘り気があります。これを粘性と呼びます。理解を簡単にするために、空気はいくつもの層が重なっている状態をイメージしてください。例えば、一番上の層を引っ張ると、隣り合う空気層が粘性による摩擦で引っ張られる形となります。この層は自転車であれば人の身体や自転車の車体に接触します。すなわち、空気の粘性作用で摩擦が生じ、走行時の抵抗となるのです。ドロドロした流体だと抵抗が大きい理由はこれです。

(2)圧力抵抗

 一般的に乗り物の空気抵抗で支配的になるのは、この「圧力抵抗」です。圧力抵抗を次の図に簡単に表現します。進行方向の前方側の面に働く圧力が大きいため、前後の圧力差により進行方向とは逆方向に力が作用し、抵抗として現れます。

これをメカニズム目線で正しく理解するには、もう少し流体力学に触れる必要がありますので、掘り下げて解説していきます。

2. ダランベールの背理による空気抵抗の理解

 空気の粘性が発見されるよりも以前に球や円柱に働く圧力差を理論的に説いたところ、圧力差が生じず球は抵抗を受けない」という解が得られました。これはダランベールの背理と呼ばれています。具体的にどういう状態なのかというと、次の図のような形になります。前面と後面の圧力が釣り合っているため、後ろ方向に働く力:抗力はゼロとなります。

 球の周りの流れをもう少し解説します。次の図のようにエネルギーの変換が連続的に起きており、ざっくり4つのセクションに分けました。

 前方側は壁にぶつかる形で速度エネルギー(運動エネルギー)が全て圧力エネルギーに変換されます。ここを「よどみ点」と呼びます。

 前方側の少し上下方向に回り込んだところは、圧力エネルギーが速度エネルギーに変換される形で空気が加速します。似たような流体機器では「ノズル」と呼ばれるものがあります。

 後方側の少し回り込んだところは、速度エネルギーが運動エネルギーに変換される形で空気の速度が減速します。似たような流体機器では「ディフューザ」と呼ばれるものがあります。

 これらの現象に対する理解を深められたい方は、以下の記事をご覧ください。高校物理から理解いただけるように解説しています。

3. 現実世界で空気抵抗が生じる理由

 さて、ダランベールの背理で解説した形態は実在気体では存在しないものの、如何にこの状態に近づけることができるかが、空気抵抗を減らす考え方になります。では、現実世界では何が起きているのかを解説します。

実在する流れでは、球の後ろ側へ壁面に沿って流れが回り込もうとするものの、”流体の粘性の作用に引っ張られ”壁面から剥がれてしまいます。これを剥離と呼びます。本来は壁面に沿って流れが拡大することで減速し圧力回復することろ、それがなくなります。すなわち、後面の圧力の方が前面の圧力よりも小さくなることで、前後に圧力差が生じて球の進行方向とは逆方向に力が作用します。これが空気抵抗の正体です。

 圧力回復できなかった分、速度が速くなったままの流れですが、これは小さな渦による摩擦(粘性)の作用でやがて熱エネルギーとして散逸していきます。

4. 空気抵抗を軽減するには?

  ポイントはもうお分かりだと思います。流れが壁面から剥がれなくする工夫が必要になります。例えば次のような形です。

これは涙滴形状と呼ばれるもので、潜水艦や自転車のヘルメットががこのような形をしていますね。流れが壁面から離れる方向にベクトルを持つ場合は、このように緩やかに形状を変化させる必要があります。

5. まとめ

 空気抵抗が少ない形状を「流線形」と呼ぶのは、流れが剥がれないようにするために流れの線に沿った形状をしているからですね。流れの剥がれを抑制する方法は他にも、ボルテックスジェネレータや吹き出しなど、単純な壁面の形状に頼らない様々な工夫が航空機でなされていますが、それはまた別の機会に解説したいと思います。

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