あまりにも有名な無次元数のため、深く考えずに使われているかもしれません。今回、レイノルズ数とは何かを改めて理解いただけるよう解説します。
1. 流体に働く力
ナビエ・ストークスの方程式において、質量力を考えなければ、流体に働く力は次の3つです。
\[
\begin{eqnarray}
慣性力:&&\rho D {\bf v}/Dt \\
圧力:&&-{\rm grad}p \\
粘性力:&&\mu \nabla^2 {\bf v}
\end{eqnarray}
\]
流体の運動はこの3つの力のつり合いの上に成り立っています。粘性力と慣性力に着目して流れの状態を大別して解説します。次の図をご覧ください。
① 粘性力がゼロの流れ(完全流体、さらさらした流れ)
ポテンシャル流と呼ばれる慣性力が支配的な流れです。慣性力と圧力で流体の力関係を決定できます。
② 粘性力と慣性力が同程度
この場合、慣性力、圧力、粘性力の3つの力を考える必要があります。
③ 慣性力がゼロ(おそい流れ、粘性的な流れ)
ストークス流とよばれる圧力のみで流体の力関係を決定できます。
2. レイノルズ数を導出
上記の①~③の様に考える流体の性質を見極める目安として、次の様にレイノルズ数を定義します。
\[
Re=\frac{\displaystyle (慣性力)}{\displaystyle (粘性力)}=\frac{\displaystyle U\partial U/\partial l}{\displaystyle \nu\partial^2 U/\partial l^2}\approx \frac{\displaystyle U(Ul^{-1})}{\displaystyle \nu (Ul^{-2})}=\frac{\displaystyle Ul}{\displaystyle \nu}
\]
ここで、
\[
\begin{eqnarray}
U:&& 代表流速(例:管内流では平均流速、境界層では主流など) \\
l:&& (例:管の直径、円柱の直径、境界層の厚さなど)\\
\nu:&&動粘性係数(\mu/\rho、応力の拡散係数)
\end{eqnarray}
\]
ポテンシャル流れに近い流れは、遅い流れではなく、実は速い流れすなわち粘性力が慣性力に対して無視できるReが十分に大きい流れなんですね。
3. レイノルズの相似則
例ノズルの相似則とは、下図の様に「2つの流れのレイノルズ数が等しい場合、物体の大きさ、流体の種類が異なっても2つの流れは力学的に相似である」ことです。
レイノルズ数を合わせれば大きなスケールの現象を小さなスケールの模型実験により推定できます。
幾何学的な倍率、力学的な倍率をかければ、模型実験から実験の流れの様子や物体に働く力がわかるという事ですね。
流れ場の代表長さ\(l\)、流速\(U\)として、無次元化すると
\[x^{\ast}=\frac{\displaystyle x}{\displaystyle l},
y^{\ast}=\frac{\displaystyle y}{\displaystyle l},
z^{\ast}=\frac{\displaystyle z}{\displaystyle l}
\]
\[u^{\ast}=\frac{\displaystyle u}{\displaystyle U’},
v^{\ast}=\frac{\displaystyle v}{\displaystyle U’},
w^{\ast}=\frac{\displaystyle w}{\displaystyle U’}
\]
\[t^{\ast}=\frac{\displaystyle t}{\displaystyle l/U’},
p^{\ast}=\frac{\displaystyle p}{\displaystyle \rho U^2}
\]
これらを用いると、無次元ナビエ・ストークス方程式は
\[
\frac{\displaystyle D{\bf v^{\ast}}}{\displaystyle Dt^{\ast}}=\frac{\displaystyle l{\bf F}}{\displaystyle U^2}-{\rm grad}p^{\ast}+\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle Re}\nabla^2{\bf v^{\ast}}
\]
この式からもRe数を合わせるだけで、力学的関係が相似になることがわかります。