[流体のプロが解説]台風の東側の風が強い理由は地球の自転にあり | Vis-Tech
流体力学雑記

台風の東側の風が強い理由は地球の自転にあり

流体力学

 コリオリの力と言うと難しく聞こえますが、身近な例えで中学理科レベルでわかりやすく解説します。

1. 台風の東側は風速が速くなる

 イラストに記載するように、東側では「台風の移動方向」と「中心に吸い込まれる風」の方向が一致するため、それぞれが足し算となり風速が大きくなります。西側では逆に、引き算となり風速が小さくなります。

風速が速くなる理解を早めるイメージ

 流れるプールをイメージしてください。「泳ぐ人=中心に吸い込まれる風」、「水の流れ=台風の移動」としてください。水の流れと同じ方向に泳ぐとスピードが出ますし、水の流れに逆らって泳ぐとなかなか前に進まないと思います。

 台風が渦が巻いているから東側の風速が大きくなるのはお分かりいただけたと思います。では、なぜ台風は反時計回りと決まった方向に渦を巻くかを次に解説します。

2. 台風の渦巻きは地球の自転による:コリオリの力とは?

 地球の自転による周速度は赤道に近いほど速くなります。イラストのように、地球の自転による回転数\(N[1/sec]\)とすると、周速度は\(v=2 \pi R N [m/sec]\)となります。半径\(R\)が大きい方が周速度が速くなるのは数式の通りです。

 さて、ここで緯度が違えば周速度が違うことはご理解いただけたと思います。この速度差により空気が渦を巻くことになります。

風が渦を巻く理解を早めるイメージ:コリオリの力

先ほどの周速度を「手漕ぎボートのオール」に見立ててください。片側の漕ぐ力が強いとボートはまっすぐに進まずにぐるぐると回ると思います。この周速度の違いにより運動方向を変える力をコリオリの力と呼びます。つまり、遠心力と同様に見かけ上の力ですね。

つまり、北半球では台風は反時計回り、南半球では台風は時計回りに渦を巻くことになります。これは台風の規模と地球という広大なスケールが一致しているために決まりますが、お風呂の栓を抜いた時に起きる渦の方向はスケールが小さすぎるため、地球の自転による速度差の影響は全く現れず、渦巻きの方向は定まりません。

3. まとめ

  • 台風の渦巻く方向が決まるのは、地球の自転による周速度が緯度によって差があるため
  • 台風の東側の方が風速が速いのは、渦巻く方向と進行方向が一致するため
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