伝熱工学

伝熱|固体の主な熱伝導メカニズム

伝熱工学

 固体の主な熱伝導のメカニズムには、格子伝導、輻射伝導、電子伝導の三つが挙げられます。それぞれの特徴を解説します。

1. 格子伝導

 格子伝導は、固体の熱伝導の中でも最も基本的なものです。格子振動の伝播によって熱を伝導します。すなわち、高温部は格子振動のエネルギーが大きく、低温部では小さいので、物体内で格子振動のエネルギー分布の均一化がおこるため、高温部から低温部に格子振動のエネルギー(すなわち熱)が流れます。

 格子振動を原子振動と言い換えれば、アモルファスにも当てはまり、すべての物質で重要な熱伝導メカニズムです。格子振動を量子化したものはフォノンと呼ばれるので、格子伝導は低温で卓越し、一般に温度上昇と共に減少します。

 高温部はフォノンが多数分布し、低温部には少数のフォノンしか分布していないので、平衡状態に近づこうとするためにフォノンの移動が生じ、このフォノンの移動によって熱が輸送されます。

 量子力学によれば、一つの振動子のとりうるエネルギーは、\((n+1/2)hv, (n=0,1,2…)\)に限られています。ここには\(h\)はプランク定数、\(v\)は振動数、\(n\)は量子数です。この場合、量子数\(n\)は一つの振動子に存在するフォノンの数を意味します。統計力学の教えるところでは、系が熱平衡状態にあるとき\(n\)の平均値\(n^0\)は

\[N^0 = \frac{\displaystyle 1}{\displaystyle e^{hv/kT}-1}\]

となります。ここで、\(k\)はボルツマン定数、\(T\)は絶対温度を表します。これより、フォノンの数は系の絶対温度に比例するので、温度の分布はそのままフォノンの分布に対応します。したがって、格子伝導によってフォノンの分布が均一化する過程とは、温度が均一化する過程(熱拡散)に等しいことを意味します。

 

2. 輻射伝導

 輻射伝導は熱放射によって熱を伝導するものです。透明度の高い物質のとって重要な熱伝導メカニズムです。光を量子化したものはフォトンと呼ばれているので、フォトン伝導ともの呼ばれています。熱放射のエネルギーの総量は絶対温度の4乗に比例するので、輻射伝導は温度上昇と共に急激に増大します。輻射伝導は高温の物体が光としてエネルギーを射出し、その光が他の物体もしくはその物体の別の部分に吸収されることよにって熱を伝導する過程です。したがって、輻射伝導の場合、熱伝導率には物理的意味がありますが、一方で熱拡散率は熱伝導率を物体の比熱で除したという以上に物理的な意味はありません。

3. 電子伝導

 電子伝導は金属において重要な熱伝導メカニズムです。これは自由電子が熱を伝導するものです。自由電子の平均自由度は、通常、フォノンと比べて非常に長いため、電子伝導は格子振動に比べて非常に効果的です。このため、金属は絶縁たちを比べて一桁以上高い熱伝導率、熱拡散率を持ちます。金属は熱も電気のほとんどを自由電子が運ぶため、熱伝導率と電気伝導率との間には比例関係が成り立ち、ウィーデマン・フランツ(Wiedemann-Franz)の法則と呼ばれています。

\[\frac{\displaystyle \lambda}{\displaystyle \sigma}=\frac{\displaystyle 2}{\displaystyle 3}\frac{ \displaystyle m_e v^2 c_e}{\displaystyle e^2}\]

ここで、\(\lambda\)は熱伝導率、\(\sigma\)は電気伝導率、\(e\)は電気素量、\(m_e\)は電子の質量、\(c_e\)は電子の比熱を表します。次の図のように、金属の熱伝導率を電気伝導率に対してプロットすると、ほとんどの金属が原点を通る直線状に乗っていることがわかります。

4. 終わりに

 以上が主な固体の熱伝導のメカニズムになります。熱伝導の対象となる物質が3つの形態(格子伝導、輻射伝導、電子伝導)のどれが支配的になるかを考えることになります。例えば、金属は電子伝導が支配的で、鉱物は格子伝導と輻射伝導が支配的となります。この特徴を理解していれば、自然界の物質の熱の伝わりやすさをイメージしやすくなると思います。

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