伝熱|熱伝導に関する基本:フーリエの法則を図解 | Vis-Tech
伝熱工学

伝熱|熱伝導に関する基本:フーリエの法則を図解

伝熱工学

 固体内を移動する熱をどのようにして取り扱うか、高校物理レベルで整理して解説したいと思います。

1. 熱伝導について

 固体内の熱伝導は、日常生活においては、たとえば電気アイロン、電気はんだごて、鉄鍋の壁などにおいて熱が徐々に伝わることが体験されていると思います。工学上においても、ボイラや熱交換器の壁、エンジン、タービンのケーシング壁などにおいて存在し利用されています。また、逆に熱の移動を小さくするためには衣服や保温材があります。
 このような熱伝導を律する主な法則は次の様になります。

2. 熱流束

 物体内に熱の流れが存在する際は、流れる熱量の大きさを伝熱量\(Q\)で表し、単位時間当たりについて示します。したがって、毎秒当りの熱の移動量を工学上の単位として取り扱うため\(W\)(ワット)で表します。
 次に、微小面積\(dA\)を単位時間に通過熱量を\(dQ\)とするとき、単位面積・単位時間当たりの通過熱量の大きさは
\[q=\frac{\displaystyle dQ}{\displaystyle dA}  ・・・(1)\]
で表し、この\(q\)を熱流速(heat flux)といいます。熱流束の工学上の単位は\(\mathrm{W/m^2} \)です。
 伝熱工学において、熱の移動を取り扱うときは、一般に単位面積\(\mathrm{[m^2]}\)・単位時間\(\mathrm{[s]}\)当たり移動する熱量、すなわち熱流束\(q\)について考える事が多く、移動する全熱量\(Q\)は通過する面積を\(A\mathrm{[m^2]}\)として次式で求めます。
\[Q=qA \mathrm{[W]}  ・・・(2)\]

3. 温度場

 固体または液体内の熱伝導を考えてみます。まず、ある場所の温度\(\theta\)は、座標\(x,y,z\)と時間\(t\)の関数として、一般には次の様に表すことができます。
\[\theta=f(x,y,z,t)  ・・・(3)\]
 ある時点において、固体内にこのように表された温度分布が存在する状態を3次元の温度場が存在するといいます。
 ここで温度場が時間\(t\)とともに変わるときに生じる熱伝導を非定常熱伝導といい、時間が変わっても温度場が変わらない時の熱伝導を定常熱伝導といいます。
 実際の熱移動では、非定常熱伝導の場合も多いですが、定常熱伝導のほうが理論的に取り扱いが易しく、熱伝導の基本となっています。

 定常温度場を単純化して上の図のように固体内の温度勾配が\(x\)方向だけに存在するものとした場合、このときの温度分布は次の式で表されます。
\[\theta=f(x)  ・・・(4)\]
 このような温度分布の状態を1次元の定常温度場といいます。

4. フーリエの法則

 熱伝導による個体内部の熱の伝わる量を数式を用いて定量的に取り扱うことにします。1次元の温度場において、この伝熱量や熱流束はどのような形で表されるのでしょう。
 1822年フーリエは、材質が一定かつ一様な同一の個体内部の定常熱伝導においては、1次元の温度場が考えられるとき、伝熱量は温度降下の勾配と、熱が流れる方向に直角な断面積とに比例することを見出しました。
 すなわち、温度降下の存在する方向(\(x\)軸方向)に、それに直角な微小面積\(dA\)を通って通過する熱量\(dQ\)は次の式で表されます。
\[dQ=-\lambda \frac{\displaystyle d\theta}{\displaystyle dx}dA  ・・・(5)\]
 ここに\(-\frac{d\theta}{dx}\)は温度降下の存在する方向(\(x\)軸方向)に沿っての温度勾配であり、\(\lambda\)はその物質に特有な比例定数です。
 式(5)をフーリエの法則といい、熱伝導の基本法則です。
 このとき熱流束\(q\)は式(5)より次の様になります。
\[q=\frac{\displaystyle dQ}{\displaystyle dA}=-\lambda \frac{\displaystyle d\theta}{\displaystyle dx}  ・・・(6)\]

5. 熱伝導率

 比例定数\(\lambda\)を熱伝導率とよび、その工学単位は\(\mathrm{W/(m\cdot K)}\)です。熱伝導率は、その物質内部において一定の温度勾配があるとき、そこを定常的に移動する熱量の大小を表す比例定数で、その物質の種類とその状態(温度・圧力など)によってきまる物性値(密度や粘性係数なども物性値)です。

熱伝導率\(\lambda\)が低い材質を断熱材に使ったりします。最近だとグラスウールがよく使われると思います。また、鉄骨住宅が木造住宅よりも断熱性能に劣るのは、鉄骨そのものが金属のため熱伝導してしまうからなんですね。

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