高校物理レベルで理解できるように、わかりやすくかみ砕いて導出の過程を解説します。これを理解いただけると、「身の回りで起こっているエネルギー変換の様子」をイメージできるようになります。
はじめに
エネルギー保存を理解するうえで知っておいていただきたい事が大きく2つあります。
エネルギーの形態
エネルギーは様々な形態をとります。例えば次のようなものがあります。
- 運動エネルギー(速度)
- 位置エネルギー(高さ)
- 圧力エネルギー(圧力差)
- 電気エネルギー(電気)
- 熱エネルギー(熱)
e.t.c.
エネルギーの順位
世の中に数あるエネルギーの中で熱が一番順位が低いエネルギーの形態です。
「損失」や「効率」といった言葉を聞いたことがあると思いますが、それはエネルギーを別の形態に変える時に使う言葉です。例えば、位置エネルギーを運動エネルギーに変換する際の効率が95%だったとすると、損失は5%でありそれは熱エネルギーになります。そして、一度、熱に変わったエネルギーを取り出して利用するには、熱単独ではもはや何もできないので外から手を加えないといけません(例えば発電所)。なので、熱はエネルギー順位が一番低いのです。
次のイラストを見てジェットコースターをイメージしてください。これは位置エネルギーを運動エネルギーに変換する装置です。昇って速度が落ちて、くだって速度が上がって、位置エネルギーと運動エネルギーを何回も変換してますよね。一方で、車輪やレールで摩擦が生じて熱エネルギーに変わっているんです。だから、だんだん速度が落ちているんですね。
ちなみに、自動車や自転車のブレーキは「運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置」です。運動エネルギー熱に変えるともったいないから(もう取り出せない)、HVでは運動エネルギーを電気エネルギーに変換しているんです。
「摩擦により熱エネルギーに変わる」。流体力学で圧縮性を考える際にとても重要なので覚えておいてほしいです。もちろん、流体力学以外にも通じる大事な考え方です。
また、「損失が発生する(何らかのエネルギーが熱エネルギーに変わる)事をエントロピーが増える」と表現します。エントロピーが増えない変換の事を「可逆」、エントロピーが増える変換の事を「不可逆」とも言います。世の中、100%の効率はあり得ないので、宇宙という大きい規模で考えた場合、エントロピーはもう増え続けるしかないんです。
ベルヌーイの定理の導出
エネルギーとは
エネルギーとは仕事をする能力のことです。高校物理で言う仕事は、物体に一定の力\(F[N]\)を加え続けて、その力の向きに距離\(s[m]\)だけ動かしたとき、「\(F\times s\)」が物体にした仕事です。流体力学でいう力は運動量保存の法則(オイラーの運動方程式)で解説しました。つまり、運動量保存式に距離を掛ける(積分する)とエネルギー保存式になります。
ベルヌーイの定理の導出
オイラーの運動方程式は次の式です。
\[\frac{\displaystyle\partial}{\displaystyle\partial t}(ρv)+ρv\frac{\displaystyle\partial v}{\displaystyle\partial s}=-ρg\frac{\displaystyle\partial z}{\displaystyle\partial s}-\frac{\displaystyle\partial p}{\displaystyle\partial s} ・・・(1)\]
ここで定常流(時間によって変わらない)を考えます。すると、非定常項\(\frac{\partial }{\partial t}(ρvA)\)=0、変数は距離\(s\)のみの関数になるので偏微分は微分に置き変わります。
\[ρv\frac{\displaystyle dv}{\displaystyle ds}+ρg\frac{\displaystyle dz}{\displaystyle dx}+\frac{\displaystyle dp}{\displaystyle ds}=0 ・・・(2)\]
積の微分の公式より\(v\frac{dv}{ds}=\frac{1}{2}\frac{d v^2}{ds}\)となるので、
\[\frac{\displaystyle ρ}{\displaystyle 2}\frac{\displaystyle dv^2}{\displaystyle ds}+ρg\frac{\displaystyle dz}{\displaystyle dx}+\frac{\displaystyle dp}{\displaystyle ds}=0 ・・・(3)\]
これを距離\(s\)で積分するとベルヌーイの定理が求まります。
ベルヌーイの定理に内部エネルギを導入
冒頭では摩擦によって熱エネルギーに変わる事を解説しました。これを表現できるように内部エネルギーを導入して拡張します。
流体を理想気体として取り扱う場合、内部エネルギーは次の様に表現されます。
\(e=C_vT\)
\(C_v\):定容比熱、T:温度
\[\frac{\displaystyle1}{\displaystyle2}v^2+gz+e+\frac{\displaystyle p}{\displaystyle ρ}=const. ・・・(5)\]
ここで、内部エネルギーと圧力エネルギーを、熱エネルギーを取り扱える状態量である比エンタルピー(\(h=e+\frac{p}{ρ}\))で表現すると
摩擦で生じた熱はエンタルピ―で表現されます。流体は、流体間(検査体積間)の速度差で生じる摩擦(壁面、乱流応力なども)により熱が生じます。温度が変われば密度\(ρ\)も変わるので、圧力エネルギー\(\frac{p}{ρ}\)も一緒くたに表現できる比エンタルピ―\(h\)はとても便利ですね♪
まとめ
- 熱は世の中で一番順位が低いエネルギーの形態
- 流体のエネルギー保存式として、ベルヌーイの定理を導出
ベルヌーイの定理はあくまでツールです。ツールは使いこなしてこそ真価を発揮しますので、具体的事例を挙げた使い方を別途、解説していきたいと思います。