伝熱工学

伝熱|放射伝熱のメカニズム:概念と基本法則

伝熱工学

 放射熱伝達は原理的にどのような法則によって行われているかを、初めて学ばれる方を対象に高校レベルにかみ砕いて解説します。

1. 放射伝熱の概念

 高温物体がもつ熱エネルギのうち、一部は放射エネルギとなり、高温物体から低温物体に空間を通して熱エネルギを移動させます。この放射エネルギを伝播するのは電磁波であり、低温物体に吸収されると熱エネルギに変わる性質を持っています。このような伝熱の形式を放射(radiation)または熱放射(thermal radiation)またはふく射と言います。

 熱放射を利用する工業製品には、高温の反射レンガ壁をもつ反射炉、ボイラーのふく射伝熱面、人工衛星のコンデンサーなどがあります。

 全ての物質は放射の性質をもっており、絶えず放射エネルギを放射しています。物体に放射されたエネルギは、一部は吸収され一部は反射もしくはいったん吸収された後に放射されます。極わずかに通過するものもあります。物体に吸収された入射エネルギは熱エネルギになります。全入射エネルギ\(Q\)のうち、吸収された分を\(Q_A\)、反射もしくは再放射された分を\(Q_R\)、通過する分を\(Q_D\)とすると
\[Q=Q_A+Q_R+Q_D\]
となります。

2. 熱放射の基本法則

(1) プランクの法則

 物体の表面の単位面積から単位時間に放射されるエネルギ量を放射能(記号E、単位[W/m2])とよびます。放射能はその「物体の温度」とその温度に対する「電磁波の波長」との関係します。プランクは黒体の単色放射能の強さを波長の関数として表わしました。これをプランクの法則と呼び、次の式で表わされます。
\[E_{b\lambda}=\frac{\displaystyle c_1 \lambda^{-5}}{\displaystyle e^{c_2/\lambda T}-1}\]ここで、\(E_{b\lambda}\)は黒体の単色放射能[\(W/m^2\cdot \mu m\)]、\(\lambda\)は波長[\(\mu m\)]、Tは物体表面の絶対温度[\(K\)]を表し、定数は次の通りです。
\(c_1=3.7413 \times 10^8 [W(\mu m)^4/m^2]\)
\(c_2=1.4388 \times 10^4[\mu m \cdot K]\)

 プランクの法則は、\(\lambda=0\)では放射エネルギはゼロであり、\(\lambda\)の増加とともに\(E_{b\lambda\)は増加し、\(\lambda\)がある値になると最大となる極値を持ち、\(\lambda\)が無限に近づくと再びゼロになることを表します。これは低温の物体より高温の物体となるに従い、赤色→黄色→白色に見えることに対応しています。この法則をウィーンの変位則といいます。

 ある一定の温度下では、すべての物体の全放射能の最大限度は、完全黒体の放射能です。したがって、ある物体のある温度における放射能\(E_\lambda\)を表すのに、それと同じ温度の完全黒体の放射能\(E_{b\lambda}\)に対する割合で次のように表します。
\[\epsilon=\frac{\displaystyle E_\lambda}{\displaystyle E_{b\lambda}}\]
これを放射率(emissivity)といいます。

(2) ステファン・ボルツマンの法則

 黒体表面1m2当たりで単位時間に放射される全エネルギ量はプランクの放射能を積分し、定数を入れると次のようになります。
\[
E_b=\int_0^\infty E_{b\lambda}d\lambda=\int_0^\infty \frac{\displaystyle c_1 \lambda^{-5}}{\displaystyle e^{c_2 /\lambda T}-1}d\lambda=\sigma T^4
\]
ここで\(\sigma\)はステファン・ボルツマン定数といい、次の値をとります。
\[\sigma=5.67\times10^{-8}[W/m^2 \cdot K4\]

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