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図解|扇風機と保冷剤の組み合わせ効果|技術者による解説

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 ヤマダ電機が保冷剤専用カゴが付属するDC扇風機をプライベートブランドで出すとの記事が気になりました。これぐらいの規模であれば実験しなくても計算で効果を求められますので、効果のほどを試算、考察してみたいと思います。

ヤマダ電機、保冷剤専用カゴが付属するDC扇風機「YFD-R83H3」など

出典:https://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=2152/id=93895/

※保冷剤には結露が想定されます。上記紹介は製品は対策が施されていると思いますが、扇風機の電気部品に結露水がしたたり落ちると漏電などで危険です。必ず対応製品で正しい使い方をしてください。

保冷剤のおすすめ

カゴが横長なので板状の保冷剤を使いたくなりますが、極力、スティック状のものにしてください。例えば次のようなものです。理由を解説します。

板状の保冷剤を使う場合

板状の保冷剤をカゴいっぱいに置いた場合を解説の為、次のイラスト(扇風機を上から見た図)を見てください。

保冷剤の風下側には風が回りこまないため、空気と保冷剤が触れる面積が小さくなり、うまく空気に冷気(*1)を渡すことができません。

*1:伝熱工学的には冷気という言葉は正しくありませんが、一般向けに平易な言葉に置き換えるために「冷気」と表現しました。

スティック状の保冷剤を使う場合

では、スティック状の保冷剤を使った場合は次の様な風流れになります。

保冷剤の側面、後方面が空気と触れてうまく空気を冷やす面積を確保することができます。

保冷材による空気冷却効果

今回は学術的な計算の過程は極力、端折りますが、エビデンスとして重要なパラメータのみメモで残しておきます。

まず、インターネットの記事だといろんなスペックが分からないため、勝手に次の様に仮定を置きました。

仮定

<スペック>
 ファンの外径:350mm、ファンの内径:150mm、保冷剤に触れる風の割合:前風量の1/8、スティック状の保冷剤3本(直径26mm、長さ200mm)
<条件>
 空気温度:25℃、空気湿度:30%、風速:1m/sec(弱風量を想定)、保冷剤温度:0℃

では、空気をどれだけ冷やせるか計算してみた結果は・・・

温度差0.2℃

空気が0.2℃になるわかではないですよ。25℃の空気を0.2℃冷やすので、結果24.8℃になります。計算の過程は本記事の下部「おまけ」の項で解説します。

ちなみに、保冷剤の融解熱を純水と同等に置いた場合、保冷剤が解けきるまで56分かかります。これは、割と持つなと思われるかもしれませんが、保冷剤の冷気を空気にうまく渡せていない事の裏返しなんですね。

「風流れを考えてスティック状がおすすめ!」と言っていたのが消し飛ぶぐらい空気を冷やせないですね。悔しいのでカゴの大きさを度外視して保冷剤を20本に増やして計算してみたところ、温度差1.6℃(25℃→23.4℃)冷やせました。

考察

なぜ、あんなに冷たい保冷剤を置いているのに空気を上手く冷やせないのか、それは熱交換するための空気と触れる面積が足りないからなんです。ルームエアコンはこの面積を増やすための工夫として、プレート状の細かいフィンがいっぱい付いています。ちなみに、このフィンは熱を伝えやすい素材としてアルミが使われているのが一般的です。

空気を冷やすための機器を設計する人向けの教科書も世の中にはあります。「熱交換器」というワードで調べると色々と出てくると思いますので、ご興味がある方は書店で手に取ってみてください。

まとめ

保冷剤による空気冷却効果は、弱風量を想定すると0.2℃程度です。

※いろいろと仮定が入っているため、桁は変わらないと思いますが参考値としてとらえてください。

おまけ

上述した空気冷却効果の計算の仕方を解説します。
個体(保冷剤)と流体(空気)の熱交換において「熱伝達率」という熱の伝えやすさを表す値を求めます。

このとき、流体は水であったり空気であったり色々な物質を取扱う場合があるため、ヌッセルト数Nuという便利な無次元数が定義されています。

\(Nu=\frac{\displaystyle αd}{\displaystyle λ}\)
\(α:熱伝達率[W/m^2K]、d:代表長さ[m]、λ:熱伝導率[W/mK]\)

これをスティック状の保冷剤に当たる空気との熱交換を計算するために、「円柱の強制対流熱伝達率」のヌッセルト数の式を参考にします。

\(Nu=C Re^m Pr^{1/3}\)

ここでΦ26の保冷剤に対するRe数、Pr数は、
\(Re=1723\)
\(Pr=0.746\)
したがって、Nu数および熱伝達率αは
\(Nu=20.1\)
\(α=18.7 [W/m^2K]]\)
ここで保冷剤ケースの熱抵抗を無視して保冷剤表面温度を0℃とすると熱交換量Qは、
\(Q=αA_{cool} (T_{air}-T_{cool})=22.9[W]\)
\(A_{cool}:保冷剤表面積[m^2]、T_{air}:空気温度、T_{cool[℃]}:保冷剤表面温度[℃]\)
次に、保冷剤により吸熱される空気の比エンタルピ差は
\(⊿h=\frac{\displaystyle Q}{\displaystyle ⊿h・V・ρ}=248[J/kg(DA)]\)
\(V:体積風量[m^3/s]、ρ:空気密度[kg(DA)/m^3]\)
空気中の水分が凝縮しない事と仮定を置くと、保冷剤による空気温度差⊿Tは
\(⊿T=0.2[℃]\)
が求まります。比エンタルピから温度への換算は空気線図と呼ばれるツールを使いましたので、それはまた別の機会に解説したいと思います。

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