WLTCモード燃費とは?(WLTPとの違い、JC08との違い) | Vis-Tech
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WLTCモード燃費とは?(WLTPの位置づけ、JC08との違い)

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 WLTCとWLTPの定義の違いについて触れ、JC08モード燃費とWLTCモード燃費を比較して解説します。

1. WLTC導入の背景

 WLTCはWorldwide harmonized Light Vehicle Test Cyclesの略で、小型車両からの排出量とシャーシダイナモメーターによる燃料消費量(燃費)を測定するための世界標準のテストです。

 テストはUN-ECE(国連欧州経済委員会)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で検討が進められ、「WLTP(Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedure)」の世界統一技術規則第15号が採択されました。WLTCはWLTPの一部です。 WLTPとWLTCは同じ意味で使用されることがありますが、WLTPではWLTCテストサイクルに加えて車両の型式認証に必要な他の多くの手順(排ガス規制など)を定義しています。

 WLTCの策定に際して、日本もJC08モード策定時のデータを提供しました。そのほか欧州や米国、インド、韓国なども各国の基準で計測した燃費データを提供しています。そのため総合データは、日本の走行実態と比較すると、高い速度・高い加速度の使用頻度が含まれているのが特徴です。

2.試験サイクル

 車両をPMR(Power Mass Ratio)および最高車速に応じて次のClass1~3に分類し、それぞれのClass毎に走行パターンが定義されます。

2-1. Class分け

 次の通り3つのClassに分類されます。

*1:加盟国のニーズにより除外することができる
*2:車両の仕様に応じてダウンスケールの手順が適用

2-2. 走行パターン

次のようにClass毎に走行パターンが異なります。Low、Middle、High、Extra-highという4種類のフェーズの内、最も高い速度域の Extra-high は各加盟国のオプションとすることで決着し、日本では Extra-high は距離ベースの交通量比として全走行の5%しかないことから使用しないことになりました。

① WLTC Class3

MEDIUM3-1/HIGH3-1:Class3aの車両に適用するMEDIUMおよびHIGHフェーズのサイクル
MEDIUM3-2/HIGH3-2:Class3bの車両に適用するMEDIUMおよびHIGHフェーズのサイクル

② WLTC Class2

③ WLTC Class1

2-3. コールド・ホット比率

 自動車は暖機後の状態に合わせて設計されているため、コールドスタート時は燃費や排ガスは良くありません。したがって、実態に合わせてコールドスタート・ホットスタートの比率を設定する必要があります。
 JC08モードではコールド25%/ホット75%としています。NEDCではモードではコールド100%としています。
 WLTPについては、加盟国間でコールド100%とすることで合意されました。

3. WLTC燃費試験とJC08燃費試験の比較

 WLTC 燃費試験とJC08 燃費試験の主な相違点として、次の2つの表が考えられます。各々の相違点の影響としては燃費値(km/L)が良くなる傾向のもの、悪くなる傾向のものがあります。

表.WLTC 燃費試験をJC08 燃費試験と比較した場合の主な相違点及び各相違点の燃費値への影響

表.試験の主な相違点の比較

① 平均車速の上昇

 JC08 燃費試験における平均車速(24.41km/h)と比較して、WLTC 燃費試験における平均車速(36.39km/h(3a)、36.57km/h(3b))は高くなっています。一般に自動車はある一定の速度までは速度上昇に伴って燃費が向上することが知られており、WLTC 燃費試験の方が燃費値が良くなる方向にあると考えられています。ただし、ハイブリッド車は低速状態等、内燃機関の効率の良くない状況においてモーター走行(補助)を活用すること等により、必ずしも同様の傾向に当てはまらないと考えられる。

② アイドリング時間比率の減少

 JC08 燃費試験におけるアイドリング時間比率(29.7%)と比較して、WLTC 燃費試験におけるアイドリング時間比率(15.4%(3a、3b))は低くなっています。これによる影響は、アイドリングストップシステム搭載車(以下、IS 車)とアイドリングストップ非搭載車(以下、非IS 車)により異なっています。非IS 車にとっては、アイドリング時の燃料消費(=走行以外に使用される燃料消費)の割合が低くなるため、WLTC の方が燃費値は良くなる傾向にあると考えられます。一方でIS 車にとっては、アイドリング時間が減少することから、アイドリングストップによる燃料消費量削減効果がJC08 と比較して発揮し難いため、IS 車はJC08 燃費値と比較した場合、相対的にWLTC 燃費値が良くない傾
向にあると考えられます。

③ コールドスタート比率の増加

 コールドスタートの場合、走行開始直後においては冷機状態であり、燃費悪化要因となっていること(オイルの粘度増加による摩擦損失の増大や冷却損失の増大等)が考えられます。WLTC 燃費試験のコールド比率は100%となっており、JC08 燃費試験のコールド比率25%と比較して、コールド比率が高いことから、WLTC 燃費試験の方が燃費値は悪くなると考えられます。特にハイブリッド乗用車において燃費が悪化している理由としては、例えば、以下の2つの要因が考えられます。

  • 低速時はエンジンが作動せずモーターのみで走行することから、コールドスタートにより暖機が遅れる
  • 排気ガスを浄化するための触媒が一定温度以上にならないと効果が低いことから、エンジンの作動時間が増える

④ 試験車両重量の増加

 JC08燃費試験時の試験車両重量は、車両重量に110kgを加算した値をなっています。一方、WLTC燃費試験時の試験車両重量については、非積載状態の重量に100kgを加算し、さらに積載可能な重量に対する積載率(※)を考慮したものの重量を加算した計算式で産出されます。
 ※ 積載率:乗用車の場合15%、小型貨物自動車の場合28%

 これにより、基本的にはJC08燃費試験時よりもWLTC燃費試験時のほうが試験車両重量が大きいものとなります。特に小型貨物自動車では、積載可能な重量自体が大きいことに加えて、積載率についても乗用車の約2倍として試験車両重量を算出することから、JC08燃費試験と比較したWLTC燃費試験における試験車両重量の増加量が大きくなります。

4. まとめ

 一般的に、JC08燃費試験に対してWLTC燃費試験の方が燃費は悪化します。これは、もともと実用燃費との乖離が多かったことに対して是正されるものと考えられます。ユーザーからすると、これまでは特に参考にならなかったカタログ記載値が実態に近くなり、比較する判断材料として使いやすくなるものと期待されます。

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