トヨタがコロナ禍でも利益を出せる理由はRRCI活動にあり | Vis-Tech
自動車技術

トヨタがコロナ禍でも利益を出せる理由はRRCI活動にあり

自動車技術

 良品廉価コストイノベーション(通称RRCI)活動について、その成り立ちからトヨタが収益を出せる真価に迫りたいと思います。

1. RRCI活動 1期:リーマンショックを発端

 2008年のリーマンショック後、主力の北米市場が低迷する中、トヨタは新興市場での収益拡大へ向けて部品コスト削減などに取り組んできました。また、2010年からはRRCI(良品廉価コストイノベーション)というコスト低減活動を開始しました。この活動は、中国自動車メーカーに対抗できるコストレベルにすることを目標に掲げられました。

 自動車の開発は、コンポーネント(部品単位)、モジュール単位、それぞれの領域を担当しているサプライヤーの技術力を、開発の上流工程から活用しています。したがって、サプライヤーの協力なしには自動車開発は成り立ちませんし、コスト低減もままなりません。そこで、主要部品について3年で3割の値下げを部品サプライヤーに要請しました。

 これがどれ程の難易度かというと、部品のコスト構造は7割が直材費、3割が開発や組付けにかかる費用と言われており、3割下げるには根本的な設計変更に頼らざるを得ません。

 設計変更には自動車開発の根本から見直す必要があり、2012年に始まったTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)との連動が始まります。開発の早い段階で部品のシナリオをつくり、サプライヤーが選定されました。トヨタとサプライヤーが一体となってTNGAとRRCIを連動させて推進されることとなります。

 その結果、世界で一番競争力のある部品を買うために始めたRRCI活動1期の出口としてプリウスが2015年に発売されました。

2. RRCI活動 2期:TNGAとの連動

 RRCI活動1期の出口としてTNGAとの連動がなされ、その活動も強化されていきます。プリウスに代表されるプラットフォームはGA-Cプラットフォーム(中型:Cセグメント)と呼ばれています。このほかにもGA-Kプラットフォーム(大型:Dセグメント)、GA-Lプラットフォーム(高級車)といったTNGAによる商品群が展開される事となります。部品の原価低減の手段の一つとして、部品の共通化による量産効果があります。この量産効果を出すために、主に次のような方法をとることになります。

① 同一プラットフォーム内の部品共通化

 GA-Cプラットフォームを事例に挙げると、プリウス、C-HR、カローラ、レクサス UXといった商品群から成ります。カローラで言えば、ボディータイプで3つ(セダン:カローラ、ハッチバック:カローラスポーツ、ワゴン:カローラツーリング)に分かれることになります。種々の性能を満たすためカバーレンジを明確にし、必要な骨格となる部品を共通化することになります。

② プラットフォームを超えた部品の共通化

 様々なものがあるため、ここではパワトレを事例に挙げます。例えば、同じエンジンでもプラットフォームを超えて使う場合があります。成り行きで個別に部品を起こす事は簡単ですが、プラットフォームを超えて部品を共通化することにはそれ相応の技術が必要になり、サプライヤーの腕の見せ所となります。例えば、モジュール構造をとることで、大~小のカバーレンジに対応し、共通部品と固有部品を設計することが常套手段です。

3. RRCI活動 3期:性能最適化

 2018年からRRCI活動3期が開始されています。ここに対する詳細は未だ未知数ですが、発表されている情報*1から推測するに主に次の二つが柱となっていると考えられます。

*1:日刊工業新聞 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00438078

① 従来の延長線上による原価低減

 生産や物流は元々のRRCI活動で推進されていた分野ではあります。その時の情勢によっても変わりうるため、引き続き最適化を図るものと考えられます。

② 性能最適化による原価低減

 これまでのトヨタはお客様の声の全てに耳を傾け、ファンを獲得してきました。そのためのシステムの一つとして市場技術速報(通称:市技報)があります。しかし、それは極一部のお客様のために性能を奢ることにもなります。ここにメスを入れて原価低減を図るものと推測されます。

4. まとめ

 RRCI活動ののちにTNGA活動が始まったことから、原価低減を始めてはみたものの自動車のプラットフォームを大胆に改革する必要性を知り、TNGAという活動を新たに発足させたものと推測されます。トヨタは下請けイジメで利益を出していると揶揄されることもあります。しかし、生きるか死ぬかの危機感から目標を掲げ、それを達成するために様々な手段を講じる姿勢はサプライヤーも見習わなければならない所ではないでしょうか。

RRCI以外にもトヨタは原価低減を基軸とした様々な仕事の進め方があり、以下の書籍で紹介されています。本記事と併せて確認いただくことで、トヨタの強固な収益構造をご理解いただけると思います。

 

タイトルとURLをコピーしました