自動車DIY

自動車のロードノイズ対策方法|デッドニングの基礎から実例

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 運転時の疲労の原因の一つであるロードノイズを抑制する方法であるデッドニングを理屈を交えて紹介します。

1. デッドニング開始の心構え

 先ず心していただきたいのが「一部の部位を対策したとしても、その効果が体感できるのは限定的」であることです。その理由を解説します。

 音響工学の世界では音の大きさを「騒音」と呼び、そのレベルを「dB(デシベル)」という単位で表わします。さて、ここでn個の音源がある場合の音圧レベルの足し算は次の式で表わされます。
\[
L=10\, log_{10}\left( 10^{\frac{L_1}{10}}+ 10^{\frac{L_2}{10}}+……+ 10^{\frac{L_n}{10} } \right)
\]
ここで、音源の数が2でそれぞれ50dBの騒音を発していたとします。その時の合計した騒音レベルは単純和の100dBとならず、次の様に53dBとなります。
\[
L=10\, log_{10}\left( 10^{\frac{50dB}{10}}+ 10^{ \frac{50dB}{10}} \right) =53dB
\]
50dBの音源を頑張って潰しこんだとしても、3dBしか騒音レベルは下がりません。つまり、デッドニングは徹底的にやって初めて効果を実感できるため、最後までやり抜く心構えが必要になります。

2. 騒音対策のセオリー

 騒音対策は、制振・吸音・遮音の3つの方法に分けられます。それぞれが意味のある対策なので解説します。

① 制振

 人の耳に音として騒音が届くからには、スピーカーの様に震えて空気を振動させる箇所が必ずあります。自動車の場合は鉄板ですね。振動し易い箇所=ペラペラで剛性が低い箇所と捉えていただいて構いません。スピーカーとなっている面の振動を抑えるための物を制振材と呼びます。数ある中でもコストパフォーマンスが一番優れているものは、日東電工のレジェトレックスという製品です。

 他にも様々な製品がありますが、最初に解説しましたようにデッドニングは徹底的にやらなければならず物量が勝負になりますので、コストパフォーマンスに優れた製品を大量に仕入れて惜しまず使う事をお勧めします。

 インターネットで検索をかけると、サスペンションやロアアーム、サスペンションマウントの様に明らかに剛性が高い部位に制振材を貼っている例を見受けますが、これはほぼ効果がないと思ってください。理屈上はマスダンパーとして期待したくはなります。けれども、そもそも剛性が高い部位の制振作用を期待するにはとてつもない質量が必要になり、それは制振材程度では実現できません。

冒頭に説明しましたように剛性が低い箇所に制振材を貼るのがセオリーです。

② 吸音

 文字通り吸音する物を吸音材と呼びます。製品によって様々なメカニズムがありますが、一番ポピュラーなのは「繊維を振動させて繊維同士の摩擦を利用して音圧のエネルギーを熱エネルギに変える」方法です。例えば、シンサレート、ニードルフェルトと呼ばれる製品が自動車の中でもメーカーが純正で使われている製品です。

それぞれの製品の特長を簡単に説明すると次の通りです。

  • シンサレート:軽く吸音特性が良い(けど価格が高い)
  • ニードルフェルトは重い(けど価格が安い)

自動車メーカでは、天井の様に重量物をぶら下げられない箇所にはシンサレートが使われており、ダッシュボード前やドアトリム内のような箇所にはニードルフェルトを使う例をよく見かけます。

③ 遮音

 音を反射するための製品で遮音材と呼びます。自動車のデッドニング専用の遮音材はとても高価なため、ゼオン化成のサンダムCZ-12や大建工業の遮音シートがDIY界隈では愛用されています。

 「音を反射する」とお伝えしましたが、ここで遮音材の使い方に注意いただきたいことがあります。防音室では「音源(室内)→吸音材→遮音材→壁」という順番で吸音材と遮音材を設置します。ここには次の2つの狙いがあります。

  • 吸音材で減衰させてから遮音材に音を当てることで遮音性能を最大限発揮させる
  • 室内側に吸音材を設置することで室内の音の反射を減衰させる

音の反射のイメージは図の通りで、遮音材がむき出しの場合は反射される際に減衰されず、かえって増幅されて逆効果になる場合もあります。楽器の演奏をするような防音室は閉空間側に音源があるため、上記のセオリーで理想的な吸音材と遮音材を配置できます。

 自動車の場合は鉄板が音源となるため、防音室のセオリー通り「音源(鉄板)→吸音材→遮音シート→室内」とすると、確かにその部位だけを見た場合は防音性は高いかもしれません。しかし、車室内を完全に防音する事は事実上困難であり反響(音の反射)による騒音の悪化を招く可能性もあります。

したがって、自動車のデッドニングにおいては「音源(鉄板)→遮音シート→吸音材→室内」という順番に設置するのが安全策と言えます。

3. デッドニングの事例

 それでは筆者の車両を実例にデッドニングを紹介します。制振材を貼って対策する箇所は、剛性の弱い部分です。ラゲッジルーム(トランクルーム)の床、リアシート下、フロア、ドア、ルーフになります。

① ラゲッジルームのデッドニング

 スペアタイヤを収納するスペースになります。ここの床の鉄板を叩くと「ぼわ~ん」という音が響きわたり、明らかに剛性がないことがわかります。

まず制振材を貼ります。

次に遮音シートを敷きます。

最後に吸音材(ニードルフェルト)を敷きます。

② リアシート下

こちらも手順は同様ですね。写真のみご覧ください。(ここの部位はレジェトレックスよりも安い制振材を試しに買ってみましたが、密度が小さいのか分厚くて粘着力も弱いので、あまり素性が良いとは言えませんでした)

この上に吸音材を敷きましたが写真を撮り忘れてしまいました。

③ フロア

 フロアの鉄板を作業するためにはフロントシート2脚とフロアカーペットを外さなければならないため、かなり気合が必要です。遮音シートと吸音材の写真は撮り忘れてしまいましたので、制振材を貼った写真のみ紹介します。

④ ドア

 ドアも惜しげもなくレジェトレックスを全面貼りしました。吸音材はドアトリム側に設置しました。

 

⑤ ルーフ

 筆者の車はルーフの内張側に吸音材(シンサレート)が純正で設置されていましたので、制振材のみの施工としました。なお、遮音材は重量があるため天井への設置が困難だったので、今回は見送りました。

3. デッドニングの結果

 各路面の粗さ毎に聴感で表現するならば次のような変化です。非常に満足のいく結果となりました。

  • 非常に粗い路面:「ガァァーー!! ⇒ ゴーーー」
  • やや粗い路面:「ゴーー ⇒ ザーー」
  • 中程度の路面:「ザーー ⇒ サーー」
  • 綺麗な路面:「サーー ⇒ ・・・」

なお、「ゴゴゴゴ」というような低い周波数の音はデッドニングで取り去ることは困難だと考えられます。高級車はサスペンションマウントのような高い剛性が求められる主要な箇所には、金属のごついリブを設置するなど構造的に対策しています。金属を溶接すれば同様の対策となりますが、現実的ではないでしょう。

 なお、今回はデッドニングの効果を数値で比較していません。騒音値はオーバーオールではなく周波数毎に見なければ評価に値しないと筆者は考えています。なぜならば、完全に音をゼロにするのは事実上不可能で、不快な音色(ロードノイズの周波数)に対策ができればそれでよいからです。例えば、計測器で計測すると環境音やエンジン音まで拾ってしまいますし、そもそも周波数特性を比較できる精度で見るためにはそれなりの設備が必要なためです。

 

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