タイヤの空洞共鳴音の低減方法|鉄板の隙間空間に対策 | Vis-Tech
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タイヤの空洞共鳴音の低減方法|鉄板の隙間空間に対策

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 タイヤを変えた後に走行時の「ホォ~ン」という大きな音に悩まされたことはありますか?これはタイヤの空洞共鳴に由来する音なのでタイヤを変えることが根本対策となりますが、それ以外にもできることはありますので紹介します。

1. 対策箇所

ルーフの内張を剥がすと、横向きに車両を横断する形で鉄の骨組みのようなクロスメンバーと呼ばれる構造体があり、この中は空間になっています。この空間がタイヤの空洞共鳴音を増幅される悪さをします。メカニズムは後述しますが、対策としてはこのクロスメンバーに空いた穴からニードルフェルト等の柔らかいものを突っ込み、内部の空間を分断もしくは埋めます。

2. タイヤ空洞共鳴とは

 メカニズム的には本来は「気柱共鳴」と呼ばれる現象がタイヤの空洞内で起こっており、そのことから一般的には「タイヤ空洞共鳴」と呼びます。気柱共鳴は笛の原理と一緒で、例えば次のWebサイトでメカニズムが紹介されています。

気柱の振動

http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/koyuu/kityuu.html

 長さによって周波数(音の高さ;音階)が変わりますので、タイヤ空洞共鳴の周波数はタイヤの大きさ(周長)に依ります。一般的には、150Hz~300Hz程度と言われています。

 筆者のタイヤの大きさは225/45R19であり、内径19インチを代用して計算すると、周長;代表長さ\(L\)は\(L=(19inch \times 0.254m/inch) \pi = 1.52m \)となります。円管モデルにおける空洞共鳴の周波数\(f_i\)は\(f_i=i\frac{C}{L}\)で与えられます(\(C:音速\))。したがって、1次の周波数は\(f_1=1\times \frac{340m/s}{1.52m}=240Hz\)となります。この周波数が「ホォ~ン」という音の周波数と一致しているはずです。

タイヤ空洞共鳴の具体的なメカニズムや計算式は以下の文献を参照ください。

ロードノイズに及ぼすタイヤの空洞共鳴の影響について

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/65/8/65_8_457/_pdf

3. 空洞共鳴音が大きくなる理由

 冒頭にクロスメンバーの空間が・・・という話をしました。上記タイヤ空洞共鳴音は、まずは車のボデーの鉄板等を伝って様々な部位に伝播します。これがそのまま鉄板を震わせて「ホォ~ン」と音を出しますが、それだけだと不快になるほどの大きな音にはなりません(もちろん、音としては聞こえます)。

 さて、先ほどタイヤ空洞共鳴の周波数を算出した際に、代表長さを1.52mとしました。この数字、ほぼフールの横幅すなわちクロスメンバーの空洞の長さとなる場合が良くあります。筆者の場合はこの数値がほぼ一致していました。すると何が起きるかというと、クロスメンバー内の空間で気柱共鳴が起こり、伝わってきたタイヤ空洞共鳴音による振動を増幅して空気に発することになります。

4. 具体的な対策方法

 したがって、対策はこの気柱共鳴の周波数をタイヤの空洞共鳴の周波数からずらす事になります。具体的にどうするか?「空間の長さ」で周波数が決まるのであれば、この空間の長さを変えればよいのです。筆者の場合はニードルフェルトをクロスメンバーの穴から突っ込み、空間を分断しました。

このニードルフェルトを裁ちばさみ等で細く切り出して使う事になります。実際にクロスメンバーに施工した時の写真を撮り忘れていたため、代わりにAピラーにも同様に施工した際の写真を紹介します。

なお、単に空間を分断するだけだと、いずれにせよ高周波側(長さが短い)の共鳴空間を残す事になります。すると、不意の周波数の振動が一致した場合に音の原因となるため、可能であれば空間をフェルトで潰しこむのがベストです。ただし、細切れにしたフェルトを空間に突っ込むのはかなりの根気が必要です。一般的には周波数が高くなれば吸音材等で音が減衰しやすいことから、割り切ってもよいかもしれません。

 以上でタイヤ空洞共鳴音の低減方法の紹介になります。タイヤの空洞共鳴が発生している部位に対して根本対策をしているわけではありませんので、完全にタイヤ空洞共鳴音を消すことはできません。しかし、たまたまクロスメンバー内の気柱共鳴の周波数と一致していた場合はストレスを感じるほどのとてつもない音となり、その場合は今回紹介の方法で劇的な効果がえられます。

 施工の前に、周波数が一致するのか計算してみるのがよいでしょう。

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