電気ヒーターはちょっとの不具合で簡単に火災につながります。しかし、セラミックを使うことで安全性を担保しており、その原理を解説します。また、その特性を利用したお勧めの使い方を紹介します。
1. なぜセラミックなのか?
いきなり核心に迫ります。発熱素子にセラミックを使うことでPTCという特性を持たせて「即暖性(快適性)」と「過昇温防止(安全性)」を両立させています。
PTCとは、Positive Temperature Coefficientの略称で、日本語では「正温度係数」と訳されます。これは、温度が上昇するに伴い、ヒーター素子の電気抵抗が増大する特性をいいます。つまり、温度が下がると電気が流れやすく、温度が上がると電気が流れにくくなる特性です。
ヒーターをつけた直後は、素子が冷たく電気抵抗が低いため電流が多く流れ、たくさん発熱します。素子が高温になると電気抵抗が大きくなり電流を流せなくなり、発熱量が抑制されます。
ニクロム線などの電熱線をヒーターとして使うと、電気抵抗は温度によって変わりません。ですのでヒーターをつけるとどんどん温度が上がり、やがて火災に至ります。それを抑制するには温度をセンシングして制御的に解決することになります。しかし、これはセンサーや制御基板が故障した際には、火災につながることを意味しています。PTCヒーターはこの役割を素子そのものが原理的に担っているので、安全なんですね。
2. セラミックファンヒーターは省エネ?
同じく電気を使って部屋を暖めるルームエアコンと比較しましょう。結論としては、同じ暖房性能を出すにはセラミックファンヒーターはルームエアコンよりも電気を消費します。理由を解説します。
ルームエアコンのエネルギー効率
ルームエアコンはヒートポンプと呼ばれる方式を使い、屋外の温度を凝縮して室内に放出するため、熱そのものはほぼ電気ではないんです。屋外の熱をかき集めるのにエネルギーを使っているため、暖房に対しては間接的に電気エネルギーを使っています*1。ここで、屋外の温度と言いましたが、温度はマイナス273.15℃が絶対零度と呼ばれており、それ以上の温度は熱を持っているものと捉えてください。なので、屋外が氷点下でもその熱を集めて暖房することができるのです。
この原理により、使った電気エネルギーを1とした場合、暖房エネルギーは2を超える場合もあります。
*1:厳密には圧縮エネルギーとして電気エネルギーを暖房にも利用しています。
セラミックファンヒーターのエネルギー効率
セラミックファンヒーターは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換します。ジュール発熱と呼ばれる原理です。この原理により、使った電気エネルギーを1とした場合、暖房エネルギーは1を超えることはありません。実際には損失を考慮すると1を下回るのです。
3. セラミックファンヒーターのメリット、お勧めの使い方
省エネでルームエアコンで負けますが、それでもメリットはあります。次のような使い方をお勧めします。
即暖性を利用した使い方:補助暖房
ルームエアコンは屋外の熱を集めてくるのに時間を要するので、温かい風が出てくるのに時間がかかります。一方で、セラミックファンヒーターは、原理で説明しましたようにすぐに温かい風が出てきます。
真冬の朝、リビングに降りるととても寒いと思います。でもキッチンで作業しなければなりません。そういった場合、ルームエアコンのスイッチを入れつつ、セラミックファンヒーターを使うことでお互いのデメリットを補うことができます。
携帯性を利用した使い方:冬のお風呂場
子供が小さいと冬場のお風呂場はとても気を使います。お風呂場や脱衣所に暖房器具を温めておくことで、とても快適に過ごせます。セラミックファンヒーターは持ち運びができますので、台所からお風呂場への移動もお手軽にできます。
4. まとめ
- セラミックの原理上、火災になりにくい*2
- セラミックファンヒーターよりもルームエアコンの方が省エネ
- 即暖性はルームエアコンよりもセラミックファンヒーターの方が優れる
- ルームエアコンと違って持ち運びができる
*2:この解説は素子の特性を表しており、電気的な回路(端子や電線など)に不具合がある場合はその限りではありません