流体|粗い管路の流速分布と摩擦抵抗式の導出 | Vis-Tech
流体力学

流体|粗い管路の流速分布と摩擦抵抗式の導出

流体力学

滑らかな管と同じく管壁が粗い場合の対数分布則式と摩擦抵抗式を導出し、なぜ、粗い管だと摩擦抵抗が大きいのかを解説します。

1. 粗い管路の速度分布

 粗い管路では粘性の作用する粘性低層は存在しません。そのかわり、個々の粗度要素の作る後流層がこれにかわります。プラントルの壁法則では、粘性\(\nu\)のかわりに粗度の高さ\(k_s\)を考慮し、これを代表長さとして書き換えなければなりません。
\[ \frac{\displaystyle u(y)}{\displaystyle U_{\tau}} = f_n \left( \frac{\displaystyle y}{\displaystyle k_s} \right)   ・・・(1)\]
対数分布則で導出した式(14)に上式を適用すると、次の粗い管路の流速分布式が得られます。
\[\frac{\displaystyle u(y)}{\displaystyle U_{\tau}}=\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \kappa}\ln\frac{\displaystyle y}{\displaystyle k_s}+A_r  ・・・(2)\]
ここで、\(A_r\)(\(r\)はrough)は普遍定数です。
ニクラーゼ(Nikuradse)は菅の内側に一様粒径の砂を張り付けた人工的な粗管で実験を行いました。その結果より、上記の粗度\(k_s\)を砂の粒径と置いた時、\(A_{\tau}\)は8.5が得られました。
\[\frac{\displaystyle u(y)}{\displaystyle U_{\tau}}=5.75\log_{10}\frac{\displaystyle y}{\displaystyle k_s}+8.5  ・・・(3)\]
しかし、実在の粗度の高さは人工的なものと異なり一様ではないため、摩擦抵抗式(こちらの式(7))と比較して都度実験的に管の粗度\(k_s\)を定義しています。

2. 壁面の粗滑

 ここでは水理学的な管の粗滑について考えます。例えば、明らかに粗い管であってもレイノルズ数が小さければ層流流れとなり滑管と粗管の差はなくなってしまいます。壁面近くの粘性係数に関する長さのスケールは\(\nu/U_{\tau}\)であり、粘性低層の厚さ\( \delta_s \)はこれに比例します。これは流速が増加すると薄くなりますが、粗度との相対的な厚さ(\( k_s/\delta_s \))で粗滑が決まると考えられています。イメージは次の図の通りです。

粗度が粘性低層の中にあれば実際上は滑面として取り扱うことができます。これを水理学的に滑らかであると言います。これは\(U_{\tau}k_s/\nu=(U_{\tau}\delta_s/\nu)(k_s\delta_s)=11.6(k_s\delta_s)\)より、粗度の高さ\(k_s\)が粘性低層の厚さ\(\delta_s\)の約1/3以下であることを想定することになります。

3. 管摩擦係数の導出

 滑らかな管と同様に、流速分布から粗い管路の摩擦抵抗式を導出できます。カルマンの速度欠損則を管断面全体について積分すると
\[ U_0=U_{max}-3.75U_{\tau}   ・・・(4)\]
(\(U_0\):平均流速、\(U_{max}\):最大流速)
また、式(2)において管中心\(y=a\)と置くと
\[U_{max}=U_{\tau}\left(2.5\ln\frac{\displaystyle a}{\displaystyle k_s}+A_r\right)  ・・・(5)\]
式(4)と式(5)より次の式が得られます。
\[\frac{\displaystyle U_0}{\displaystyle U_{\tau}}=2.5\ln\frac{\displaystyle a}{\displaystyle k_s}+4.75  ・・・(6)\]
これを「対数則に基づく摩擦抵抗式の導出」の式(5)
\[
f=8\frac{\displaystyle \tau_0}{\displaystyle \rho U_0^2}=8\left( \frac{\displaystyle U_{\tau}}{\displaystyle U_0} \right)^2
\]
を用いると
\[\begin{eqnarray}
f&=&8\left( 2.5\ln \frac{\displaystyle a}{\displaystyle k_s}+4.75\right)^-2
&=&\left( 2\log_{10}\frac{\displaystyle a}{\displaystyle k_s}+1.68 \right)^-2  ・・・(7)
\end{eqnarray}\]
ここで、\(a\)の代わりに管の直径\(d\)を用い、実験による補正を加えると次の摩擦抵抗式が得られます。

粗管の摩擦抵抗式

\[\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \sqrt{f}}=-2\log_{10}\frac{\displaystyle k_s}{\displaystyle d}+1.14  ・・・(8)\]

ものづくりの視点に立つと、流体力学的観点でも管の内壁の表面粗さを決めることができますね。

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